「ケルトの虎」のめざましい経済発展 - アイルランド基礎知識③
こんにちは、コウです。
昨年(2019年)の夏に家族でアイルランドを旅行した際のことを紹介するブログの第6回。アイルランド近代の歴史的背景として、70~80年代に吹き荒れた北アイルランド紛争については、前回ブログで紹介したとおりですが、今回はその後のめざましい経済発展について説明します。
90年代に入り、北アイルランド紛争に対する和平努力が実を結び始めるのと並行して、アイルランド共和国は経済発展を遂げていきます。95年~2000年代初頭までの経済成長率は10%前後となり、世界でも最も経済成長を遂げた国の一つとなりました。この時期のアイルランド経済の急成長を称して「ケルトの虎」(Celtic Tiger)と呼ばれています。「ケルト」は紀元前にヨーロッパ大陸より渡ってきたアイルランド人のルーツ、ケルト人から来ています。
この経済成長の大きな要因としては、法人税率が低く、英語圏かつ若く高学歴な労働力が豊富などの理由により、マイクロソフトやインテルなどの名だたるハイテク産業の誘致に成功したことが挙げられます。実はアイルランドは英語圏で唯一のユーロ導入国です。
が、2008年のリーマンショックにより不動産バブルが崩壊し国内銀行が破綻。信用不安が増大したことにより、IMF(国際通貨基金)の緊急支援プログラムを受け入れざるを得ない経済危機に陥ります。
しかしながら2014年以降は再び経済状況を回復。その後は堅調な発展を続けており、いまや一人当たりGDPは世界第5位の78.3USドル(2018年度、日本は39.3USドルで26位)と、世界有数の裕福な国となったのが、現在のアイルランドの姿です。
実際に行ってみたアイルランドは、バブル的な華やかさがあるでもなく、のどかで穏やかな国でした。首都ダブリンを一歩離れると、自然がいっぱい、言い換えればそれほど開発されていない牧歌的な国土が広がっているように感じました。
GDPの高さは、GAMFA(Google、Amazon、Microsoft、FaceBook、Apple)などの外資ハイテク企業がもたらす収益による数字であって、アイランドの人々の実際の暮らしや実感とは違うところにあるのかもしれません。