アイルランド独立の歴史を学ぶ、キルメイナム刑務所
こんにちは、コウです。
昨年(2019年)の夏に家族でアイルランドを旅行した際のことを紹介するブログの第35回。
続いてご紹介するのは、キルメイナム刑務所(Kilmainham Gaol)。このシリーズの最初のほうの記事で、英国によるアイルランド支配の歴史について短く解説しましたが、その支配からの解放を目指して戦った独立の歴史を学ぶ博物館になっています。
※キルメイナム刑務所は、新型コロナウイルス感染対策のため休館していましたが、7月26日よりオンライン事前予約必須とした上で再オープンしたようです。日本から渡航して観光するのは、まだ当分先になりそうですが、一日も早く世界中の人が訪れられるようになってもらいたいです。
◇過去ブログ
キルメイナム刑務所には、ダブリンに到着した翌日の午前に行きました。奥さんと娘は、前日の長旅の疲れもあり、ホテルで休むこととし、私一人で見に行きました。午後1時半にはトリニティ・カレッジの見学の予約を入れているため、午前中に見学していったんホテルに戻ることとしました。
◇キルメイナム刑務所のホームページ(英語)
◇キルメイナム刑務所の場所(Googleマップ)
往きは、せっかくリープ・ビジターカードを買いましたのでバスで行きましたが、帰りは散歩も兼ねて歩いてホテルまで戻りました。徒歩でも30分くらいのところにあります。真夏(7月末)ですが、爽やかな気候で、気持ちよく散歩できました。
1795年に建設されたキルメイナム刑務所。まだ英国支配下にあって、民族運動の高まりとともにアイルランド独立に向けた反乱、抵抗運動が激しくなった時期でした。そしてその中で捕らえられた数多くの独立運動の闘士が投獄され、ここで亡くなってきたという、言わばアイルランド独立運動の記念碑的な存在が、この刑務所です。
アイルランド自由国成立後の1924年に閉鎖された後は放置されていましたが、アイルランド民族運動の歴史を保存するため、1984年に博物館としてオープンしたそうです。
入場料は大人€8(約1,000円)でした。
ここはガイドツアー方式(英語のみ)で引率され、説明を受けながら見学していきます。
最初にシアターで、刑務所の概略的な説明があります。
通路を通って見学を進めていきます。
重罪人を収監する独居房。ジョセフ・プランケットは、1916年のイースター蜂起(復活祭(イースター)週間に起きた武装蜂起)の際の指導者の一人。イースター蜂起はわずか7日間で鎮圧され、プランケットやジェームズ・コノリーなどの指導者たちはここキルメイナムに投獄され、16人が処刑されます。
プランケットは処刑のわずか2時間前に、妻のグレース・ギフォードと刑務所内のチャペルで結婚式を挙げたのです。
妻のグレース・ギフォードが収容されていた独房。画家だったギフォードは、独房の壁に母と子の画を残し、その後釈放され、生涯を全うしたそうです。
見学のメインとなる中央ホール。天窓から光が差し込む構造。そして少ない看守が多くの囚人を監視できる仕組みなのだそうです。
ここは北アイルランド問題を扱った映画のロケ地として多数使われているそうで、以前の記事で紹介したダニエル・デイ=ルイス主演「父の祈りを」(1993年)などでも有名です。
◇過去ブログ
この1階部分の独房には入ってみることもできます。先ほどご紹介したジョセフ・プランケットの妻グレース・ギフォードの独房もここにあります。
中庭に出ます。ここで処刑が行われたのです。壁面に銘板が取り付けられています。下の銘板は、1922年11月17日に、ここキルメイナム刑務所で最後に処刑された4名、ピーター・キャシディやジェームズ・フィッシャーなど、まだ20歳そこそこの青年たちのものです。銃の不法所持により逮捕、起訴され、処刑されたのだそうです。
この中庭でガイドツアーによる説明は終了。後は中に戻って、展示コーナーを自由に見学できます。
アイルランドの彫刻家オリバー・シェパードの初期の彫刻「イニス・ファイル」(1901年)は、イースター蜂起にも影響を与えたとされています。
イースター蜂起の際に、その中心者であり臨時大統領となったパトリック・ピアースによって読み上げられたという「アイルランド共和国宣言」。署名者に、ピアースの他、ジェームズ・コノリー、ジョセフ・プランケットなどの名前が見えます。
いかがでしたでしょうか。
アイルランドの近代史を学ぶ教科書、キルメイナム刑務所。日本にはこのような革命の歴史はありませんが、他国の支配からいかに命懸けで独立を勝ち取ってきたか、日本人にとっても重要な学びの場なのではないでしょうか。